のノミ跡が残る「鼓岩(つづみ岩)」

映画監督   大林宣彦
 尾道の、海や町を見降ろす千光寺山の中腹に、ぽんぽん岩と呼ばれる大岩がある。小石を握ってその岩の真ん中を破くとぽんぽんと音がするので、そう呼ばれるのである。
 それはきっと、岩の内部が空洞になっている故なのだが、ぼくにはそれがまるで岩の声のように聞こえる。
 面白くて、楽しくて、そして恐ろしい。
 だから、こどもの頃から、ぼくはこのぽんぽん岩(鼓岩(つづみ岩))が大好きだった。面白くて楽しいだけでは駄目。こどもは恐ろしいものに心ひかれるのである。