【民話 浄土寺山のばけ猫退治】【A】
むかし、むかし浄土寺で不思議なことがありました。
みんなが集まって法要をするとき、ごちそうのお膳が一つなくなるのです。だれかが数え間違ったのか、何かの手違いかと思ってみたりしましたが、いつもなくなるのです。
お膳を一ニつ、ニつと数えてきちんと並べ、ふと見ると一つ足りないのです。目にもとまらぬ早さで消えてしまいます。どこをさがしても見つかりません。
あまりにも不思議な出来ごとなので、
ない見事な毛でした。
「これはまさしく妖怪の毛だ。藩の名誉にかけて妖怪を退治せよ」と殿様の一声で、奉行様は妖怪退治をする者をさがしました。しかし妖怪と聞いただけで、どんな武芸者も怖がってしりごみするばかりです。
そこで白羽の矢がたったのは、相方に住んでいる弓の名人千葉四郎衛門というさむらいでした。四郎衛門も妖怪と聞くとはじめは断りました。でも四人も役人が来て
「受けてくださらなければ、我々は腹を切らなければなりません。どうかお願いいたします」と、その場で切腹の用意をはじめました。
町中にうわさが広がりました。そしてこの話が殿様の耳までとどきました。
「うちの領内でこのような悪いうわさが出るとはけしからん。よく調ぺてまいれ」
役人たちは法要のとき、しっかりと目をひらいて見張っていましたが、やはりお膳が一つなくなるの
です。あまりの早業なので、これは妖怪の仕業にちがいないということになりました。妖怪と聞いて、みんなはとても怖がりました。姿を見せなき妖怪とはいったい何だろうかとまたうわさが広がりました。
ある日、一人の役人がごちそうの並んだ大広問で一本の毛を見つけました。銀色に輝く見たことも
四郎衛門はしかたなく妖怪退治を引き受けました。
今夜の法要は、名人四郎衛門が妖怪退治をする日です。百匁ろうそくが立ち並んだ広間は昼間のように明るく、そのなかにごちそうのお膳が並べられました。人々はひとことも声を出しません。
弓に矢をつがえて、四郎衛門は目を閉じ、
心を開いて静かにえものを待ちました。ろうそくの炎がかすかにゆらぎました。そのときです。すかさず名人は息を止め、天井へ向けて矢を放ちました。
「ギャオウ」と耳をつんざく悲鳴。広問全体がゆれ動き、百匁ろうそくが一度に消えました。
天井から血がしたたり落ち、それが広間から庭へ、
そして浄土寺の東側山奥へと続いていました。山奥には大きな洞窟があり、その中に血のあとがついていました。
四郎衛門が中に入っていくと、たくさんのお膳やお碗が転がっていました。そして血のにおいがして、うめき声が聞こえてきました。奥にランランと輝く
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鐘楼。
12月31日の24時ちょっと前から、1人づつ順番に鐘をつきます。
多宝塔の後部の手摺り部分から見ると、阿弥陀堂、本堂を見ると、それぞれの手摺り部分が一直線になっており、建立当時の大工のこだわりが伺われます。