浄土寺山 不動岩
尾道市東久保町  標高:133.8m
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い顔をしたお地蔵さん。ちょぼが橋でいくら待っても不動さんが現れないもので、これは置いてけぼりを食ったかと、千鳥足でぼつぼつ歩いて帰ることにしました。ところが、勤番所のところへさしかかると役人に見つかってしまいました。
「こりゃこりゃ。こんな夜更けに酔っばらって通るとは何者じゃ。この不礼者めが」と、地蔵さんの首を一刀のもとにはねてしまいました。

 心地よい夜風が岩はだをなでて通り抜けています。その涼風にあたって酔いが少しずつさめてきた不動明王は、地蔵さんのことを思い出しました。
 不動明王はそう言って、地蔵さんの首と胴を足の指に乗せ、浄土寺の谷間へ引き返しました。もともとは道端にまつってあった地蔵さんですが、こういう姿では恥ずかしいだろうと、路から少し入った草むらの中へ安置しました。これですっかり酔いのさめた不動明王は、岩の中へすっぽりおさまりました。
 それからというもの、不動明王は岩から抜け出すことはなくなったということです。

尾道民話伝説研究会 編「尾道の民話・伝説」
(2002年5月刊)より転載
 不動岩の上から尾道の市街地(西方向)
「お地蔵さん、帰る道も分からず、さぞかし困っていることじゃろう。早く迎えに行ってやらんことには」
 不劫明王は、大急ぎで岩から飛び出すと、一またぎ、ニまたぎ。勤番所のところへやって来ると、お地蔵さんの首と胴体が離れ離れになって転がっています。
「これはどうしたことじゃ」
ふと目を上げると、勤番所の戸板に張り紙がしてあり、「夜中に酔っぱらって無断に通行したゆえ、打ち首に処した」と書いてありました。
「これはかわいそうなことをした。許してくれやお地蔵さん」










 尾道で最大の磨崖仏。この岩上からの眺めは、多くのカメラマンが訪れるフォトジェニックな場所です。小津安二郎(おずやすじろう)監督のファンであるドイツのヴィム・ヴェンダース監督もここを訪れ、カメラマンである婦人の見事な景色の写真が、原宿で行われた展覧会に出品されていたのが2006年でした。
 ここには岩を切り取ろうとした跡があります。あいている穴のことを矢穴(やあな)といいますが、ここに矢穴の数だけ襖(くさび)を打ち込んで、順番にたたいて徐々に岩を裂くように割る、昔からの手法の跡が尾道の岩には数多く残されています。
不動岩の上から向島(南方向)


 浄土寺山の山頂近くの巨岩に刻まれ、港見下ろすお不動さんは、背の丈およそ4メートル。憤怒の顔ではあるけれど、なぜかちょっぴり寂しそう。
登山道 経由 浄土寺へ:   奥の院(浄土寺山山頂)へ:
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