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「磯の上にしっかり根を張って立つむろの木よ。大宰府へ下る時、私は妻や息子といっしょにお前を見たのだ。しかし、その妻はもうこの世にはいない。私の愛する妻が今どこにいるのか尋ねたら、お前は私に教えてくれるだろうか。」
こう、むろの木に問いかける旅人は、神亀五年
(728)の初め大宰府に下ったが、まもなく妻を亡くし悲嘆にくれた。一方、奈良の都では、翌神亀六年二月の長屋王の変によって、光明皇后が誕生し、藤原氏の全盛時代を迎えようとしていた。
子息 家持を伴い、亡き妻の思いを胸に帰京した旅人は、翌天平三年(731)七月、萩の花を気に
かけながら、静かに67年の生涯を閉じた。
(案内板 2010年4月27日 鞆の浦ロータリークラブ創立四十周年記念より)