延命水という井戸
西久保町にある正念寺には、延命水という井戸がある。諸国を遊行していた三十一世同念上人が建てたとされるこの寺院は、元々参拝者や旅人に井戸の水やその水で煎じたお茶を振る舞っていた。
その代わりに彼らが持つ諸国の話を得ることで、多くの情報をいち早く取り入れることができたのだ。このようにして情報を得たことで、早くに対策を練ることができたのだ。旅人や行商人に対する関係の作り方やおもてなし方は、昔からこの地に住む者たちが心得ていたのだ。それは元を辿れば、海に面し山に囲
まれ、豊富な地下水に恵まれた結果であろう。
尾道に訪れた人に貴重な水を振る舞い多くの情報を得ていた尾道の人々、実はナポレオンのことも知っていたとか。当時の日本は鎖国をしており、外国の情報はすべて長崎の出島に集中していた。情報が出島から江戸に向かうまでの行路に尾道が含まれていたのだろ
うか。そうなると尾道は江戸より早くに多くの情報を得ていたことになる。日本のことだけでなく外国のことも知っていたとは、尾道の情報網は侮れない。
「かみのらぼ 1号」(2013年7月発行)尾道市立大学 芸術文化部発行より