行基の作と伝えられる薬師如来像がおられますが、「薬師如来とは」
今は病気にかかると医療を受けていますが、かつては薬師如来に病気平癒だけを願ったのではなく、七仏薬師のご利益を丸ごと信じ、社会・国家の安寧を願ったのです。
密教の七仏薬師法を行えば、滅重罪(めつじゆうざい)から除病至菩提(じよびょうしぼだい)にはじまって、除病延命、産生安穏(さんしようあんのん)、天変、風雨、時節反逆の難まで、あらゆることにご利益があるとされています。
平安時代には、天皇の病気も天災も、飢饉や疫病などの社会不安の原因も、御霊(ごりょう)の祟りだと考えられていた。御霊とは、政治的陰謀の犠牲になった者の霊のことである。そのためには、抽象的なご利益ばかりの他の如来より、病気治療をはじめ、呪詛を封じ、災害や反逆から護ってくれる薬師如来は頼りになったのでしょう。ちなみに、聖武天皇が全国に建立させた国分寺の本尊は、今は代わっているものも多いのですが、当初は薬師如来だったらしい。