済法寺(曹洞宗)
尾道市栗原東一丁目  標高:24.6m ~ 80m
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【民話 拳骨和尚】

 むかしのことじや、尾道でもよう相撲の場所が開かれていたんよ。
 力士にもいろいろあって大名お抱え力士からその地方の力士までみんな力自慢ばかりじやった。
 江戸時代の終わり、尾道で相撲の場所が開かれていた。
「わっはっはっ……」
 大きなな笑い声に、立ち上がろうとしていた横綱は、驚いて観客席を怒りの目で見回した。
「誰じや大声で笑うやつは」
「わっはっはっはっ、怒るな関取、あんたの腰があまりにふらついているんで笑ろうたまでじゃ」
 観客席からまた
少しは力のある男もいるぞ」
「なに、この横綱に勝てる相手がいるものか」
 横綱は満座の中で笑われて、すっかり腹を立ててしもうたんじゃ。
「じゃあ、その男をつれてこい。この土俵でわしが相手をしてやろう」
「そりゃあ、面白い、その男はのう、このわしじゃ」
 そう言うて物外和尚は、一歩前に出た。
 「見事相手になってやる。わしの拳骨はきついぞ。この拳骨を横綱の背中で受け止められるかの。それともその背中が粉みじんになってしまうかの」このようすに、観客たちは気をのまれたのか、
大きな声がもどってきたのじや。
「なんじゃと、天下一強いこの横綱を笑うとはもってのほか、誰じゃ、出てこい」
 ますます横綱は怒ったんじゃ。そのとき観客席から、
「わしが芙ろうたんじゃ」
そう言う声とともに六尺近い大男が立ち上がったんよ。ぼうず頭の大男、みんなはそれが済法寺の住職物外和尚じゃとすぐわかった。
「わっはっはっ、まだ怒っているんか。あんたが日本一の横綱というけえ、どんな横綱かと思うて見にきたんじゃがの、その腰じゃ無理じゃ。この尾道にも








静まりかえっていたんよ。
「よし行くぞ」
巨体をのそりのそりと土俵に運んだ物外和尚の目ははやふさのようだったんじゃ。
「見事受けとめるか」
「お、、受けいでなるものか」
 横綱は背を向けて仁王立ちになったんじや。和尚は袖をまくり、こぶしを大きく三、四回まわした。カを入れた顔は赤くなり、巨木のようなたくましい腕。観客たちは思わず目を閉じたんよ。和尚の拳骨が横綱の背中をつぶしてしまう気がしての。
「和尚さま、お願いでございます。しばらく
お待ちください」
 飛び出してきたのは行司だった。和尚の迫力に行司は恐ろしゅうなったんよ。
「何、待てとな。今になっては遅い。のいた、のいた」
 その声に振り返った横綱は、和尚の赤い顔、






太い腕、大きな拳骨を見てアッと恐れいって手をついたんよ。
「お許しください。和尚さまのカには参りました」
 でものう、和尚の手はまだぐるぐる回っていて、どこかに打ちつけんと止まらんようじゃ。ついに、本堂の表柱に打ちつけて、やっと止まったんじゃ。 柱は一センチほどもくぼんで、拳骨の型が残ったということじゃ。

尾道民話伝説研究会 編「尾道の民話・伝説」
(2002年5月刊)より転載




 『山間で落としものをしたら独り相撲をとれ』というジンクスがある。

 山の中で何かを落としてしまい、見つからない。そんなとき、独り相撲をとると出てくるといわれている。そんなことで紛失物が出てくるとはとうてい
思えないが、そうした俗信がある。
「なぜ独り相撲なのか」
 日本には至るところに神がいる。その数は八百万(やおろず)にもなる。
 山には山の神がおり、山で落としものをするのは山の神が隠すからだとか、落としものをしたら
山の神にお願いすれば見つけてくれると信じられていた。
 その山の神はなぜか相撲が好きだということになっている。そこで山の神が喜ぶ相撲をとってみせれば、落としものを出してくれる、あるいは探し出してくれるというわけである。




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