虚空蔵堂 明鏡山円満院星井寺
鎌倉市坂ノ下18-28 標高 12.0m
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 虚空蔵菩薩は密教で発達した仏です。
 果てしなく大きな智慧と福徳があるとされ、その智慧を頼って「虚空蔵求聞持法」という修法が生まれました。この菩薩の陀羅尼(だらに)を百万遍唱えると、人並み外れた記憶力が授かるといいます。空海もこれを成し遂げ、利益を得たそうです。また、五大虚空蔵菩薩を本尊とした息災・来福の祈願法もあります。五大虚空蔵菩薩とは、金剛界曼荼羅(まんだら)の如来が虚空蔵菩薩に変化したもので、菩薩の法力を五つに分けて五尊で表しています。(『イラストでわかる「日本の仏さま」』より)
 「明けの明星」は虚空蔵菩薩の化身・象徴とされ、智慧の菩薩とも評され、人々がに智慧を授けてくれるといわれています。広大な宇宙のような無限の智慧と慈悲を持った菩薩です。

 虚空蔵は、地蔵にたいする言葉で、もとは兄弟のようななかであったのですが、土に縁のふかい地蔵尊だけが、特別に農村の人気をあつめることになったようです。

 虚空蔵菩薩ご真言

のうぼう あきゃしゃきゃらばや
おんありきゃ まりぼり そわか
 光明真言

おん あぼきゃ べいろしゃのう
まかぼだらまに はんどま じんばら
はらばりたや うん
 年昔。毎倉が相模の国の僻地であった頃、この井中より阻石が出たのが星の井の名の起りという伝えもあります。
聖武天皇の御治世の天平二年(730)と言いますから、頼朝開府より遡ること460年の大昔です。
 弘法よりも先輩にあたる、我国奈良朝時代の名僧・
行基大菩薩は全国修行巡錫の途中、この辺りで虚空京聞持の法を修行しておりました。智慧と頭脳明噺と広大無辺の宇宙を掌る仏様・虚空蔵菩薩を本尊(念持仏)として、頭脳明噺・記憶力増進を計ろうという秘法であります。
 修行を続け、一心に祈っていると、ここに奇蹟
が現われました。この井の中に三つの明星が輝き、夜も真昼のように付近の木々を照し、それは七日七夜にわたって起り土地の人達を怪しみ畏れさせたのです。
 それを見て「これはきっと、井の中に何か珍しいものが入つたに相違ない」と行基は言い、とり出してみるように、と指示して入ってみると、果して






ピカピカと光る黒い石がありました。その石を前にして、僧は厳かに言いました。
 「これは虚空蔵菩薩が石になつて降り給うたに相違ない。石が明星の光を放って鏡のように四辺を照すのは、世の人々に信仰心を起させ、平和とよろこびとを招かんがためであろう」
 やがて、このことは聖武天皇のお耳に達しました。天皇は行基に命じて、大きな虚空蔵菩薩の像を作って、井戸の近くにまつるようにと仰せられました。今ある坂ノ下の虚空蔵堂は、このとき行基の刻んだ木像をまつったお堂と言われます。
 舟守地蔵
 明星石は?

 極楽寺切通頂部近くの左側の小高いところにある成就院に保管されてあるのを筆者は先日、拝観いたしました。
 末法の世の中なので、かつての光輝を失い、ただの
石(硯の材料や碁石にも使われる黒色珪俗に試金石という種類)になってしまっているようですが、高さ20cm、周囲31cmで数キログラムの重量と砲弾のような形態を具えた逸品でした。

「鎌倉 趣味の史跡めぐり」(長峰五幸 著)より








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